2006年10月29日(日曜日)

【IFMAR1/10ツーリングカー世界選手権】2006年7月5日レポート

カテゴリー: - T2K @ 22時02分23秒

【IFMAR 1/10ツーリングカー世界選手権】 2006年7月5日(水)?8日(土)

今年最も力を注いでいたイベントが、イタリアで開催された、ツーリングカーの世界選手権でした。2年に1度行われる同大会は、今年で第4回となりますが、毎回トップ戦線には加われるものの、まだ一度も優勝できたことのないレースなだけに、何とか一勝したいところ。
ちなみに過去3回の成績は2000年度(日本)2位、2002年度(南アフリカ)4位、2004年度(アメリカ)4位でした(写真提供RCスポーツ様)。

1位 Andy Moore (GB) / HB / 19Point
2位 Masami Hirosaka (JPN) / YOKOMO BDM / 18Point
3位 Paul Lemieux (USA) / HUDY / 17Point
4位 Marc Rheinard (GER) / TAMIYA / 17point
5位 Viktor Wilck (SWE) / HUDY / 13Point
6位 Teemu Leino (FIN) / Schumacher / 13Point
7位 Surikarn Chaidejsuriya (THA) / HB / 13Point
8位 Ronald Volker (GER) / HB / 10Point
9位 Craig Drescher (GB) / Associated / 9Point
10位 Rick Hohwart (USA) / TAMIYA / 7Point

以下は、RCワールド2006年9月号に掲載された「Keep RUNNING vol.05」を転記したものです(text/大道智洋)。

タイトル:ISTC電動ツーリング世界選手権を終えて

「R/Cレーサー人生でもっとも大きな意味をもつレース」
 これまで、この連載ではレーサー"広坂正美"のこれまでとこれからを伝えてきた。そのなかで、広坂にとって2006年度のISTC電動ツーリングカー世界選手権がいかに大きな意味をもつレースであるか?を伝えてきたつもりだ。
幾多のレースで勝利してきたことは、ひとつひとつ広坂にとって重要なものであったが、そうした積み重ねがあったからこそ、今回のツーリング世界戦は、それらすべてを受けるかたちで重要な意味を含んでいたといえる。なぜなら世界チャンピオン保持記録をかけたレースであり、ツーリングカーという、誰もが認めるトップカテゴリーで勝利するという、ふたつの大きな目標を含んでいたからだ。
 考えてみてほしい。勝つことがもっとも困難な世界選手権に、何度も勝つ続けるということを。世界中の強豪がひしめく、今回の世界選手権に勝利するということを。いずれも、途方もない困難の先に結果を求めることになる。
このふたつに同時に挑むことができたレーサーは広坂ただひとりであり、おそらく、この条件に追いつくことができるレーサーが登場するまでには、我々は膨大な年月を待ち続けることになると思う。R/Cはホビーである。けれど、ホビー枠をはるかに超越したスポーツとして行われた今回のツーリング世界選手権は、広坂の2位という結果を持って、世界中のR/Cレーサーの記録と歴史に明確な区切りをもたらしたと思っている。

 「今はただ、プレッシャーから開放されて、やっとリラックスできた….、という気持ちです。レースが1カ月前に近づくと、心臓の鼓動が速くなる状態がずっと続くんです。極度の緊張とプレッシャーによるものだと思いますが、食事もだんだん喉を通らなくなってくるし、でも食べないと体力が衰えますから、無理してでも食べるように心がけたり….。自分の精神状態を自分でコントロールする状態が続きますね」
 帰国した広坂が最初に発した言葉はこのようなものだった。広坂はこれまで実力があったからこそ、チームの力に助けられながら結果を出してこれた。体が異常をきたすほどの緊張感のなか、レースを進めてきたという事実は世界一の保持記録であっても、自らの実力を過信することができない世界がそこにある証といえるのではないだろうか。

 「それでも、現地に到着してしまうと、レースの雰囲気に入り込んでいくので、緊張は緩んできますね。特に今回は1/12をキャンセルしていたので、本戦が始まるまで、3日間の余裕がありましたから、ゆっくり1/12を観戦しながら、余裕をもって挑めましたね。ツーリングでも上位にきそうな選手が出ていますから、彼らの走りを見て、どういった精神状態でツーリングの本戦にのり込んでくるか?を見定めていましたね。成績のいい選手はノリノリでツーリングに挑んでくるし、成績がよくなかった選手は、ツーリングで挽回しようと意気込んでくる。そんなメンタルな部分を意識しながら、観戦することができました」
 
 普段、人のレースを見ることがあまりない広坂にとって、貴重な3日間だったにちがいない。そんな広坂が迎えたレース本番は、意外なアクシデントで幕を開けることになる。広坂は直前になってモーターをオリオン製に変更した。ところが、このモーターにはラベルが貼られておらず、上下を逆さまにセット(+-が逆になる)するというイージーなミスを誘発してしまうのである。これによって広坂は1ラウンド目でいきなりスタートができず、リタイヤを余儀なくされてしまう。

 「正直、何かしらのアクシデントはあると思っていましたから、想定内ではあったんです。マーシャルについた僕のもとに海野くんが飛んできて謝ってくれましたが、僕は思わず笑ってしまいました」
 広坂にとっても悔しいアクシデントだったが、そこで焦るでもなく、憤るでもない。いかにいいメンタルコンディションでレースに臨めていたか?を表すエピソードだ。しかし、これで広坂のレース運びは明確になっていく。今回のレースでは、多くのドライバーがアクシデントに見舞われた。ハンダづけの脱落やベルト切れ、そして雨….。詳細はレースレポートに譲るが、こうしたトラブルによって、レース運びが明確になるのもまた、皮肉な話である。

 「このアクシデントで、残りのヒートが捨てられなくなりました。雨もいつ降り出すかわからない。1ラウンドで終了になれば、それで終わりですし、仮に3ラウンド行えたなら、残りの2ラウンドはやはり捨てられない。その後、路面温度の異常な上昇でグリップが得られず苦戦してしまいました。シュガーウォーターも撒かれず、プラクティスのデーターはまったく役に立たなくなりましたね」

 いきなり手探りを強いられたレースで広坂は戦い続けることになる。しかし2ラウンドを3位でゴールし、3ラウンド目には1位でゴール。そして4ラウンド目にはトップタイムをマークする。しかしこの状況下での他の選手との差は5分間走って1秒程度の世界。ワンコーナーで勝敗が分かれてしまうレベルだった。
 「なかなか自分の名前が上位に上がってこないので焦りもありましたね。3ヒート目の1位でようやく上にきて。けれど、残りのヒートが4位以降なら勝機は得られない。なんとか3位以内に入ってくれ!というチームの声に応えられなければ、と思いましたね」
 
 そして4ラウンド目のトップゴールで、トップに躍り出た広坂はようやく流れをつかんだ実感を得る。
 「4ヒートのレースならこれで勝利となりますが、5ヒート目の実施がアナウンスされた時点で、まだ予断を許さない状況になりました。捨てられないヒートがひとつ増えてしまったんです」
 この時点でステディな走りをこなし、レースのカレントリーダーだったアンディ・ムーアがやや有利な状態で決勝ヒートを迎えることになる。しかし、この運命の最終ヒートで広坂はアンディに0.5秒の遅れをとり、最終結果2位でのフィニッシュとなったのである。この5ヒートに象徴されるように、今回のレースはアンディと広坂の勝負だった。双方ともタイムでも他を圧倒し、走りも非常に安定していたといっていい。されど、これが結果。広坂は勝利することができず、また、連続世界チャンピオン記録もこの時点で途絶えたことになる。競技の結果とはあっけない側面をもち合わせているが、広坂自身は今回の結果を真摯かつ冷静に受け止めているようだ。そして晴れ晴れとした表情で、次のモチベーションを探すという。KEEP RUNNING。これからも、この連載では走り続ける広坂の姿を記録していく。


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広坂正美選手
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